仮想の話や小説、詩を思いのままに綴った日記です。

小説『美和子』54話(星状神経節ブロック) 
小説『美和子』54話(星状神経節ブロック) 


前回はこちら 小説『美和子』 53話(耳鼻咽喉科)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)


入院手続きを済ませると、事務職員に2階の2人部屋に案内された。
ベットは2つとも空いている。家から持って来たパジャマに着替える。
パジャマは前開きのボタンの付いたものと指定されていた。
喉に注射を打つ為に、喉から胸にかけて大きく開ける必要があるらしい。
「山崎さん。着替えが終わりましたら、1階の耳鼻咽喉科の診察室へいらしてください。」と
天井に付いているインターホンから、看護婦の声が聞こえた。現在の看護師である。
この頃はまだ、看護婦と呼ばれていた。

外来患者が大勢待っている廊下を通り抜けて、診察室へ入ると、
昨日診察をした女医に呼ばれた。
「こちらへ、座ってください。」と言われ、俺は背もたれのある、患者用の大きな椅子に腰掛けた。
主治医である女医は髪の毛を明るい栗色に染めて、優美のホステス達も顔負けの派手な化粧をしていた。
なかなかの美人である。眼光が鋭くて頭も良いせいか、気が強そうだなと言う印象を持った。

「口笛を吹いてみてください。」女医に言われて、
口笛を吹こうとするが、右の口元からヒューヒューと空気が漏れてしまう。
「では、頬を膨らませてみてください。」と言われて、それもできない事を知る。
女医の指示に従って言われたとおりの動作をする事も気恥ずかしいし、
又、そんな単純な事が不可能である事実も、何だかとっても情けなくて屈辱的だった。

「喉にある神経の根元に、これから毎日ブロックと言う注射をします。
一緒に2時間の点滴もやりますからね。」
頭の中に神経系の図が浮ぶ。星状神経節ブロックか。点滴はステロイド剤だろうな。
昨夜、父の部屋の書物を片っ端から当たり、治療についての下調べをして来た。

「原因ですが、何か思い当たる節はありますか。」

ここ数日、家に帰らない日が多くなっていた為、俺が2階の部屋に寝ているとは知らずに、
お袋が殺虫の為の勳煙剤を焚いて出かけてしまった事がある。
目が覚めて、1階に下りてみると視界が真っ白で、台所や部屋が煙だらけだった。
その時の殺虫剤の嫌な臭いは、今でも忘れられない。慌てて窓を開けて、外に飛び出した。
「誤って勳煙式の殺虫剤を吸い込んだ事がありますが、そのせいではないでしょうか。」と、尋ねてみた。
「あり得ませんね。」即座に、素っ気無い答えが返って来た。聞かなければ良かった。


「血液検査では、異常は見られません。ただ、白血球数の低下が少し気になります。」
ヘルペスウィルスも調べたのだろう。
「この辺は痛くなりませんでしたか。」と、言って、耳の裏側の茎乳突孔を押された。
「特には。」原因不明の儘、ひとまず治療を開始することになった。
この儘、麻痺が治らなければ、俺は一生、この緩んだ顔と付き合って行かなければならなかった。
こんなだらしのない顔では、水商売には復帰できそうもなかった。心は曇るばかり。

昼食を食べ終わった午後2時から、点滴を開始。左の手の甲の血管に針を刺す。
その点滴を打っている間に、星状神経節ブロックを行う。
パジャマの胸元を大きく開けて、消毒をした後、女医が喉の中間にある甲状軟骨の突起に触れる。
俗に喉仏と言われる喉頭隆起だが、俺は男の癖に余り突起してはいないので神経節が探し易そうだ。
ブロックが終わった後は、瞼が異常に重く感じられ、眠気を誘った。



つづく

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小説『美和子』53話(耳鼻咽喉科) 
小説『美和子』53話(耳鼻咽喉科) 


前回はこちら 小説『美和子』 52話(顔面神経麻痺)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)


鏡を見てしばらくの間は、何が起こったのかわからずにただ呆然としていた。
己の顔面の歪みが現実として理解できた後でも、
往生際悪く、何かの間違いであって欲しいと強く願っていた。
手指や足指を動かしてみるが、手も足も自在に動く。
どうやら脳梗塞などの脳血管疾患ではないようだ。
麻痺は顔面の右側だけに起こった。痛みなどは全くない。
ただ、食べるものの味がいつもと違う。食べ物が右の口元からこぼれる。
瞼を閉じることができないため、いつも目が乾燥している気がする。

母親は外出していていなかった。
母の部屋に行き、小机から被保険者証を取り出して、近所の公立病院へ向かった。
伯父が開院する病院 へ行く事はこの時、まったく頭になかった。


初診受付で申込書を記入して、被保険者証を出した。
「今日は何科を受診されますか。」若い女性の事務職員が、俺を見て言う。
「顔が麻痺してしまって、このとおりなんです。どこの科に行けばよろしいですか。」
事務職員は眉間に皺を寄せて
「少しお待ちください。」とだけ言って、奥へ引っ込んだ。
奥から40歳代の男性が出て来て
「手足など他には麻痺はありませんか。」と、尋ねる。
胸の名札には「事務長」と表記されている。
「顔だけなんですよね。」
「では、こちらをお持ちになって耳鼻咽喉科へいらしてください。右手の角を曲がってすぐです。」


耳鼻咽喉科の受付へ行き、診察券とクリアファイルに入った書類を出した。
「初めての方ですね。こちらの問診票を記入してください。」
渡された問診票には過去の病歴や、家族の生死、病歴を書く欄があった。
死亡の文字を丸で囲み「父」と書いた。
父が死んでから1年が経過したという現実を思い出す。
甘いようだが、俺の心の中では父がまだ生きていた。
どこか海外にでも行っていて、あと数年すれば帰って来るような、そんな錯覚を覚える。
「父は外科医」と、書きたくなったがそんな事は聞いていない。
むしろ、この人と血縁であるかどうか不明である事の方が問題だろう。
いつかは、はっきりさせなければならない。

この耳鼻咽喉科には2人の医師がいて、どちらも30歳代の男と女の医師だった。
学会の証書などが飾られていて、そこに生年月日が記されていた。

俺の担当は30歳代前半の女医だった。白衣を着て、頭には大きな喉頭鏡をつけている。
色々と顔を触ったり、目や口を動かしたりした後で
「顔面神経麻痺ですね。かなり重度の方です。
でも、若いからまだ治る見込みがあるので、入院しましょう。」と告げた。
「えっ。入院ですか。仕事もあるし困るんですよね。通院では駄目ですか。」
女医は黒いボールペンで、サラサラとカルテを書いていく。ドイツ語だ。
「神経ブロックを毎日行いたいので、入院です。
早く治療を開始した方が、それだけ良くなる確立も高くなります。
顔の麻痺を治すことが、今は一番ではないでしょうか。貴方自身の判断にお任せします。」
確かにこの顔では、仕事どころではなかった。この儘では困る。治せるものなら治さなければ。
「では、よろしくお願いします。」

俺はこの顔面神経の麻痺を治療する為、明日からこの病院に入院する事にした。


つづく

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『OFFICEきうり』プロデュース 澤木マメ脚本・構成 大鳥れい LIVE SHOW2 The Love Dictionary〜彼女達がおしえてくれた愛〜

元宝塚劇団娘役トップスターの大鳥れいさんが、
7月16日(水)に恵比寿天窓.switchにて
ライブショーを行います。

大鳥れい ライブショー

The Love Dictionary
〜彼女達が教えてくれた愛〜


昼の部/15:30〜  夜の部/19:30〜
1人7,000円(ワンドリンク付)

チケット予約は6/15(日)午後4時〜
プロデュースは『OFFICEきうり』
構成・脚本は澤木マメ

詳しくはOFFICEきうりのブログでどうぞ   





 

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小説『美和子』 52話(顔面神経麻痺) 
小説『美和子』52話(顔面神経麻痺) 


前回はこちら 小説『美和子』 51話(幕の内弁当)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)


紫陽花の花が咲く、梅雨に入った6月の頃だった。
ちょうど俺は玄関にいて、傘を持って出かけようとしたところで、玄関の呼び鈴が聞こえた。
ドアを開けると、50台後半のスーツを着た紳士風の男が立っていた。
雨量も多いこんな雨の日に、着ているスーツはクリーニングが行き届いて型崩れがない。
セールスマンの類ではない事位は、男の持つ重厚な雰囲気からすぐにわかった。
「こんにちは」と、男が挨拶をすると、俺の後ろから
「まあ、熊谷さん。よくいらっしゃいました。さあ、どうぞ上がってください。」と、母親が言う。
「聡志、もう行く時間でしょ。早く行きなさい。」まるで、邪魔者のように俺は家から追い出された。

後で話を聞いてみると、あの男は北海道の高校時代の先輩で、偶然、近所でばったり会ったらしい。
今は、大学の講師を務めていて、一人娘と暮らしている。奥さんとは、離婚をしたようだ。
息子である俺は、内心、とても面白くなかった。
何も家に上げることはないじゃないか。父が生きていたら、そんなことはできなかっただろう。
「いいじゃない。母さんだって、お友達は欲しいわ。」そう言って、毎週のように男が家に来るようになった。
俺が出かけていった後、母はこの家で男と2人きり。何をしているのかと、想像するだけで腹が立った。
母に対する態度が反抗的になっていった。

「何もないわよ。この歳になって。ただのお友達なんだから。」嘘だろうと思いながらも、
母親の言う言葉を信じていたい俺がいた。だが、そんな甘い幻想は見事に裏切られた。

CDラジカセを買おうとして秋葉原に行った時の事。
偶然にも、男と母親が腕を組んで楽しそうに前から歩いて来た。何たる偶然。
又しても、神は俺に罰を 与えるのか。

母親は照れくさそうな笑みを浮かべて
「聡志、どうしたの。こんな所で。お店は休みなの。」と、言って、もたれかかっていた男の腕を離した。
「今から、行くんだ。」と、能面のように無表情な顔で答えると、2人を無視して歩行速度を上げた。
もう母親は、俺の母ではない。あいつの女だ。俺の父親だって誰なのか、わかったもんじゃない。
父親が亡くなったのだから、法律上は誰も文句は言えない。ただ、俺はこの世で居場所を失った気がした。

邪魔者は消えるしかない。そんな風にしか考えられなかった。
もう、26歳の大人の男だ。自分の所帯でも持つべきなのかも知れない。だが、相手もいない。

自暴自棄になっていた俺は、以前から声をかけてくれていた、優美の近くの店のホステスと関係を持った。
特にこれと言って、彼女を好きだったわけでもない。彼女には肉体関係のある客も数人いたようだ。
誰かに俺を理解して欲しかった。俺という存在を、現実として証明したかった。
果てた後は虚しさだけが残った。枕元でタバコを吸いながら、女が何かを話すのだが
俺にはちっとも楽しくなくて、罪悪感のようなものが不快に渦を巻いていた。
目の前を漂っている、タバコの煙のように。
彼女の名は恭子と言う。恭子は、俺の顔をじっと眺めては
「渡ちゃんと、こうしていられるなんて夢みたいだわ。」などと、ほざいていた。
どうせ、何人もの男達に同じような台詞を言っているのだろう。
俺の頭には、母が男に抱かれている姿が浮んだ。醜悪だ。不愉快だ。そして八つ当たりのようではあるが、
この女に次に会う事はもうないだろうなと、心の中で思っていた。


皆さんは、この小説『美和子』の第2話(鏡の中の別人) を覚えているだろうか。

浴室を出て鏡を見たら、鏡の中には俺ではない別人が映っていた、という話を。
この数日後、俺は右顔面の神経が麻痺して、見るに耐えない醜い顔になった。
どうやら、天罰が下ったようだ。
誰かに話かけようとしても、皆、俺の醜く歪んだ顔を見ては、無言で避けて行く。
病院職員でさえ、俺を見ると一瞬、嫌な顔をする。

後で美和子に聞いた話だが、あの頃、同じ病棟に入院していた患者は
「あの顔はきっと頭も異常に違いないから、関わらない方がいいわよ。
何かされでもしたら大変だから。」と、俺の事を偏見の目で見ていたそうだ。

その時の状況のことを考えると、田中マネジャーの気持ちが少しはわかるような気がした。
田中さんが、本当に白だった場合の話だが。
黒だったならば、自己の正当性を偽装する事に徹して、あんな事件を起こすことはなかったような気がする。


つづく 小説『美和子』53話(耳鼻咽喉科)  (06/07)

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小説『美和子』 51話(幕の内弁当) 
小説『美和子』51話(幕の内弁当) 


前回はこちら 小説『美和子』 50話(優美なる淑女達)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)


店のテーブルを全て隅の方へと運び、フロアの真ん中を中心に椅子を丸く配置する。
今日は月に一度のミーティングの日だ。
優美では、毎月10日にミーティングを行っていた。
その日だけは、ホステスさん達が午後5時に出勤する。
早い出勤である為、ミーティングの後にはお弁当が配られるのだが、
有名な料亭のもので、1人前が3千円もする幕の内弁当だった。
ホステス40人分と黒服や厨房スタッフの6人分で計138,000円の支払いをママが負担する。
店の経費とするのであろうが、労を労い、店側とホステス側とのコミュニケーションを図るには、 最も効果的な方法だろう。


ママは一緒に食べる時もあったが、食べずに自宅に帰ってしまう時もあった。
今日はママが不在のミーティングとなり、部長が取り仕切ることになった。
ママが店に出なくなって、1ヵ月近く経とうとしていた。

「ママは大丈夫なんですか。」皆が、部長に聞く。
「とりあえず体は元気だけど、何せ期待の一人息子さんが
あんなことになってしまったから・・・。かなり憔悴しています。」
「ママの家に電話をかけてみたけど、いつもの声じゃなかったわ。」と、清子さんが言う。
「私も電話しようか迷ったんだけど、そっとしていてあげた方がいいのかなと思って。」
出席していた36人のホステス達が好き勝手を喋り出し、ザワついたところで部長が止めた。
「では、みなさん、定例のミーティングを始めたいと思います。よろしく。」

「まずは、先月4月の売上成績から発表します。 先月の10位は、みどりさんで1005,500円でした。」
名前を呼ばれたホステスは、椅子から立ってお辞儀をし、他の者は拍手をして健闘を称える。
次々に名前が呼ばれて、呼ばれた者はお辞儀をしていったが、千春さんは呼ばれたことがない。

「4位は和樹さん・・・。」と、呼ばれて一同が又、ザワついた。
和樹さんも、すぐに立とうとはしなかった。長いことトップ3で争って来た人だ。
その売上金額はいつも、4位とは大きく離れていた。まさかである。
元々、笑顔の少ない人であるが、一段ときつい顔で礼をした。

「3位は節子さん。3,892,580円でした。よく頑張りましたね。」
どうだと言わんばかりに、白いドレスを着た節子さんが立ち上がってお辞儀をした。
和樹さんの方を見る者もいた。興味本位で見ている者、同情的な視線を送る者、
「様を見ろ」と思っている者もいるのかも知れないが、俺にはよく解らなかった。
和樹さんからの指名分けや場内指名が多い者にとっては、和樹さんの成績下降は不安材料かも知れない。

2位は清子さんで、1位はルミさん。いつもと変わらなかった。
この2人は今日も同伴客と約束をしていて、ミーティングが終わると弁当を食べずに出かけて行った。

「今日、名前を呼ばれなかった方も、新しい客の指名や同伴を増やして、来月は頑張ってください。
では、お食事にしましょう。」

皆にウーロン茶を配り終わると、俺達、黒服も弁当にありついた。
弁当箱は直径30センチメートル程の、漆器でできた丸いものだった。
蓋を開けると、豪華な料理が食欲をそそる様に、色彩鮮やかに盛り付けられていた。
中央には俵型で黒ゴマがかかったご飯があり、周囲には豊富なおかずが並んでいた。
中トロや鯛などの刺身と焼き鮭。海老を焼いたものに牛肉の網焼き。野菜の煮物、揚げ豆腐、 ワカメとカニの酢の物にきんぴらゴボウ。切干大根や豆を煮たもの、香の物。

俺にはこの丸い弁当箱が今日の座席に見えてしまい、中身のおかずがホステス達に見えてしまった。
主役も脇役もいて初めて、幕の内弁当としての形を成す。
刺身だけでも、焼き肉だけでも弁当になれる料理だが、幕の内弁当としては、切干大根や香の物が必要だ。
客の中には刺身だけ食べたい奴もいれば、魚が嫌いで肉しか食べない奴だっているが、
高級クラブである優美の店は、幕の内弁当だからこそ経営が存続できているに違いない。
おかず達が箱の中で喧嘩しないように、しっかりと仕切る容器が必要ではないだろうか。
この弁当箱のように・・・。



つづく 小説『美和子』 52話(顔面神経麻痺)  (06/01)

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小説『美和子』50話(優美なる淑女達)
小説『美和子』50話(優美なる淑女達) 


前回はこちら 小説『美和子』 49話(桜の木)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)



久しぶりに優美に出勤した。
ママは店には出て来なかったが、ホステスさん達の顔を見ると懐かしい気がした。
「辞めちゃったのかと思って心配したわよ。」と、明美さんに肩を叩かれた。
「僕ちゃん。久しぶりね。相変わらず、惚れ惚れするようないい男ね。」清子さんがからかう。


トレンチと呼ばれる直径40センチメートル程の丸い銀の盆を、
左手の中指と薬指を折り曲げて、親指と人差し指、小指の三本の指を立てて持つ。
大きなフルーツ皿を乗せて、客のテーブルへと運ぶ。
「これを倒したら2万円だな。皿も割れればプラス1万円の損害。」と、
内心はヒヤヒヤしながらも、涼しい顔で格好つけて颯爽と絨毯の上を歩く。
いつもは余り感じないが、高いボトルやフルーツを運ぶ時だけは
妙に絨毯の毛が靴底にひっついて来る感じがして、邪魔臭かった。

席の前で
「失礼します。」と、言って、右手で高級硝子でできたフルーツ皿の脚を抑えながら、
絨毯に左膝をついた。

「あら。渡ちゃん、久しぶり。どうしたの。お休みしてたの。」
声をかけて来たのは節子さんだった。
亡くなった部長に、給料を上げろと詰め寄っていたあの人だ。
節子さんの顔を見た瞬間、右手で掴んでいたフルーツ皿の脚を離してしまいそうになった。
顔が別人だったからだ。目と鼻を整形したようだった。
着るものも以前とは違って、金がかかっていそうだった。

そういえば、このテーブルの上に立っているボトルはルイ13世である。
こんな高い酒をボトルキープする客がうちの店にいるだろうかと、
以前、田中マネージャーと話した事がある。
空瓶だけでも酒屋が何万円か出して引き取るという、
丸っこくて両縁にヒラヒラがついた飾りボトルだ。
フルーツ皿を何とか無事にテーブルに置き、小皿やフォークを置いた後で
「ちょっと、体調が悪かったものですから。」と、節子さんの方を見ずに答えた。

「何だ。お兄さん。病気していたのか。ちゃんと食べているかい。」と、
高級洋酒のボトルをキープして、1人で来ている客が言う。
この客は、50台半ばで頭頂部に髪の毛は無く、毛髪は3分の1程しか残っていない。
黒縁の眼鏡をかけていて、身なりは極普通。格子模様のジャケットを着ている。
ブランドもので上質なのかも知れないが、そんなに高級そうには見えない。
何をやっている人なのだろうか。とても、そんな金持ちとは思えなかった。

「これで、寿司でも食べてくれよ。」と、俺に1万円札を出した。
「いえ。そんな。」と、困った顔をすると、節子さんが
「いいのよ。渡ちゃん。社長はお金持ってるんだから。いただいちゃいなさい。」
そう、言って、1万円札を折りたたんで、俺の胸ポケットに押し込んだ。
「ありがとうございます。」お辞儀をして、席を離れた。

節子さんはこの上客に気に入られたお蔭で、売上成績がトップ10に上がっていた。

バランタインのボトルが立っているテーブルがあった。
大澤さんが若い衆を連れずに、珍しく1人で飲んでいる。
そしてその隣に寄り添っているのは、千春さんだった。
大澤さんの伝票を見ると、指名者の名前が千春さんになっていた。

則子と田中さんが亡くなって、それぞれの恋人であった筈の2人がくっついたのか。
千春さんは、噂で則子と大澤さんとの関係は知っていた筈だが、
大澤さんは、千春さんと田中マネージャーが暮らしていたことは知らない筈だった。
千春さんに子供がいる事も知らないのではないだろうか。
邪推するのは止めておこう。
亡くなった人間が帰って来るわけじゃないし、
生きていかなければならない人間には事情というものがある。


男達はこの『優美』という高級クラブに何を求めて来るのかは知らないが、
今夜も綺麗に着飾った40人の淑女達は、優美な振る舞いを装っていた。



つづく 小説『美和子』 51話(幕の内弁当)  (05/25)

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小説『美和子』49話(桜の木) 

小説『美和子』49話(桜の木) 


前回はこちら 小説『美和子』 48話(大学ノート)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)



「聡志、ご飯を食べなさい。」母が俺を呼びに来た。
階段を下りようとすると、味噌汁の匂いがする。
家を出てマリンの寮にいる頃は、お袋がつくる料理が恋しかった。
だから、家に戻ってすぐの頃は 食事を作ってくれる母親に感謝もしたが、
今はまた、当たり前のようになってしまった。

「貴方、いい加減に目を覚ましたら。いつまで、そんな夜の仕事なんかしている気。
それで将来は、一体何をしようというの。そろそろ、真面目にお勤めを探しなさいよ。」
今までにも小言は言われていたが、今回は初めて面と向かって叱られた。
親としては当たり前の説教だったが、俺の頭の中は、あの大学ノートのことで一杯だった。
食事中、ずっと母は俺の仕事のことを話していたが、俺はただ事実が知りたかった。
俺の出生のこと。俺は親父の子供ではないのか。誰の子なんだ。
言いたいことを飲み込んで無表情な儘に食事を口へ運んだが、全く味がわからなかった。
ご飯粒はモソモソとして、何の為に食事を摂らなくてはいけないのかと不思議に思えた。
亡くなった親父 が、もし、俺の本当の父親ではないとしたならば、この家で今日まで
お袋は、俺のことをどう思って育ててきたんだろうか。
母親から見た息子とは、どういう存在なのだろうか。
思考回路は現実逃避の道を選んだ。

異国で息子が事故で亡くなった優美のママのことが頭に浮かび
今日から優美に出勤しようと決断した。千春さんのことも気になるし。
「ごちそうさま。母さん、俺は今の仕事がしていたいんだ。」そう言って、
母の顔も見ずに部屋に戻った。

洋服ダンスの引き出しから、ビニールに包まれたワイシャツを取り出して
ビニールを破り、ホッチキスで閉じられたクリーニング屋のタグを取った。
糊の利いたワイシャツは少し硬いが、気が引き締まる。肌に触れると心地よい感じがする。
洋服ダンスの扉を開けると、樟脳の匂いがした。
ほんの僅かだが会社勤めをしていた頃 の、地味なグレーの縦縞のスーツを選んだ。

優美に勤めるようになって1年以上経過していた。
色々なことがあり過ぎたが、とりあえず、今を生きるより他はない。
今の俺には、やりたい事など見つからない。偉大なる父のようには。
壁の振子時計は午後1時半。
母が洗い物をしている台所の前を静かに通って、外へ出た。

駅までの道を歩いていると、近所の小学校の庭に桜が咲いていた。
スーツを着ているために、少し汗ばむくらいの陽気だった。

桜の木を見ていたら、母に手を引かれて歩いた幼稚園のことや
大学に入学した年のことを思い出した。
あの頃は、まだ何も世の中のことが見えていなかった。
親に金を出してもらって飯を食い、ただその時を生きていれば良かった。

学校で学んだ学問や研究の数百倍も、現在、自分が経験している
己の人生の方がよっぽど厄介で、難解な気がしている。 答えがないのだ。
危険な香りのする、闇の中をさ迷うような夜の仕事など辞めて、普通の生活 をすればいいのに。

桜の木はまるで、答えを全て知っているかのように自信に満ちて咲き誇っていた。
俺はもう子供ではない。大人の男としての自覚を持たなければ。
父のように社会貢献の姿勢を保てなくても。


桜の木



つづく 小説『美和子』50話 優美なる淑女達

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小説『美和子』48話(大学ノート) 
小説『美和子』48話(大学ノート) 


前回はこちら 小説『美和子』 47話(振子時計)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)


母親が電話で誰かと話をしている。
初めのうちは習い事か何かで知り合った友達かと思ったが。どうも様子がおかしい。
俺に聞かれたくないような、早く切って欲しいような応答をしている。

そういえば俺が家にいた数日の間に、無言電話が3回ほどあった。
俺に思い当たるのは千秋ぐらいだったが、俺の声を聞くとすぐに相手は電話を切った。
想像力を巡らせて犯人を推理してみるも、目ぼしい人物はこれと言って浮んではこなかった。

男か・・・。
とっさに、俺の頭に浮んだ。
母親の電話の相手は男じゃないのか。

あの母に限って。
父親の一周忌も終わらない内に、男を作るとは思えなかった。
でも、息子の俺が言うのもおかしいが、お袋は家庭臭さがない。
年齢よりかなり若く見えるし、身づくろいには気を遣っている。
どこかの男が言い寄って来たとしてもおかしくない。

不快な思いがした。
得体の知れない有毒なガスを、肺の深部まで吸い込んだような息苦しさ。
その時は瀕死状態のように気が遠くなった。
俺はそこに生きてはいなかった。
姿形はあるのだが、これ迄存在していた俺は一体、何だったんだ。


父親だけではなく、母親まで。
いや、もしかすると母親は父親が生きている頃から、付き合っていた男がいたのかも知れない。
息が苦しく、頭が鉛のように重く感じた。

父の部屋でみつけた1冊の大学ノートにはこう書いてあった。
聡志は誰の子」
鉛筆書きで、血液型の組み合わせが数種類書いてあり
後になってそれを消そうとしたらしく、大きな円や小さな円が力を込めて渦を巻いていた。
当時、ある学者の論文によってDNA鑑定が急速に発展したが
この時代、通常の家庭ではDNAによる親子鑑定など考えられなかった。
そこには伯父の名前も記されていた。

父は兄である伯父と母の不貞を疑って死んだのか。
父が遺言書 に俺のことを敢えて嫡出子などと書いたのも
俺のことを自分の子ではないと思っていたからに他ならない。

それ迄は実子であるという甘えから、外に女がいた父親を恨んでも来た。
しかし、他人であるとなれば話は変わる。
しかも本人が納得したものではなく、母親に騙されていると考えたとしたら。
医師である父が、科学的根拠に基づいて判断したものならば間違いはない。

俺は父の子供ではないかも知れない。その疑いをもってから母親を見る目が変わった。
お袋に限ってそんなことができる女じゃないと信じている。
だが、俺には理解できない女の顔をもっていたとしても不思議ではない。

父を恨むことで、それをバネのようにして我武者羅に働いて来ることができた。
それが今、急に腑抜けになってしまった状態。
身近な人間が多数死んでいった 喪失感と共に、今度は自分自身の存在に対する疑念。

あの大学ノートさえ見つけなければ、こんな事にはならなかったのに。
真実を確かめる勇気が、今の俺にはなかった。 虚無感、脱力感しかなかった。
これを母親に突き詰めたところで、本当のことがわかるわけ でもあるまい。



つづく 小説『美和子』49話 桜の木

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小説『美和子』47話(振子時計)
小説『美和子』47話(振子時計) 


前回はこちら 小説『美和子』 46話(鋏)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)


家に優美のママから電話があった。時刻は夕方の5時だった。

「渡くん。どうしたの。店に出ていらっしゃい。」
いつも隙がない小柄な和服姿のママを思い出す。
温かみのある、静かで優しい絹糸のような声だ。その声に気を許してしまい

「何だか、やる気が出なくて。」思わず本音を漏らしてしまう。
「何、言ってるの。渡くん、駄目よ。元気を出さなくちゃ。」
ママにしては、きつく叱っていたのかも知れないが、俺の心を温めた。
田中さんはあんなことになってしまったし、優美では3人もの関係者が亡くなっている。
ママもさぞかし辛いに違いない。

そう言えば俺はもう何日も、人と喋っていなかった。お袋とも、まともな会話をしていない。
「皆、困っているから、早く出ていらっしゃい。明日、待っているからね。」
そう言って、ママは電話を切った。

実は俺の倦怠感の理由は、田中さんの事件や新宿の街の事件のことだけではなかった。
父の部屋である物をみつけてしまったことが、脱力感の最大の原因。
この話はいずれ又、改めて。

その日の夜10時に、今度は蘭から電話があった。

「わたくし池田と申します。息子さんはいらっしゃいますか。」
最初、怪しい男からの電話だなと身構えた。蘭は俺の本名を知らなかったが、俺の声を聞いて
「渡ちゃん。あたしよ。蘭。」
「えっ。蘭さん。どうして、ここがわかったの。」
「新しく入った優美のボーイに、貴方の家の電話番号を調べさせたの。ごめんね。」
「いや。別に。」困った新人だ。

「あのね。ママの息子さんが亡くなったのよ。」
「ママって、優美の。ママならさっき、電話で話したばかりだよ。」
「ママの息子さんは、仕事でアメリカに住んでいたでしょう。交通事故だったって。
 優美のお客さんから聞いて、渡ちゃんに知らせなきゃと思ってね。」
暫く寝ていたせいか、とっさの事で頭が働かない。
時計の秒針の音と共に少しずつ、現実であることを理解する。
ママが大変だ。俺は、明日から優美に出勤しようと心に決めた。

「それとね、渡ちゃん。田中さんも亡くなったのよ。肺癌だったって。
 あたしね、最近、田中マネジャーの夢ばかり見るの。」
「・・・。」突然、衝撃的なことを言われて、全く言葉が出ない。
田中さんが死んだ。そんな馬鹿な。俺の周りは一体、何人死ねばいいんだ。
人はこんなにも簡単に、死んでいくものなのか。

「確かにね。店を出る前に田中さんが具合が悪くて、トイレで吐いてもいたんだわ。」
「・・・。」相槌もできない。
「うちの店を出る時に、バンマスが『途中で俺が運転するから、大丈夫。』とも、言ってたのよね。
ひょっとすると、田中さんは本当に運転していなかったのかも知れない。
あたし、もう、何が何だかわからなくなっちゃって。」涙声になった。
それは、とても重要なことじゃないか。今頃になって、そんなこと言っても田中さんはどうするんだ。
あんたの勘違いだったとしたら、偉いことじゃないか。心の中で散々に、蘭を責めていた。

「そうなんだ・・・。」静かな口調に、自分自身が驚いたが、もしここで
俺が蘭を追い詰めたならば、彼女は又、自殺しようとするかも知れなかった。
「あの時は、そう思ったんでしょ。見たものを言っただけなんだから、仕方ないじゃない。」
受話器の向こうから嗚咽が漏れ聞こえ、蘭が激しく泣き出したのがわかる。
証言を取り消すかどうかは、蘭さんがよく考えたらいいよ。」

電話を切った後で、田中さんを裏切ったような罪悪感に苛まれた。
真実が知りたいとは思うが、これ以上、俺の知人で誰も死んでは欲しくなかった。

壁にかかった時計を見ると、時刻は午前零時に近かった。
飾り物の振子が激しく揺れていた。


つづく 小説『美和子』48話 大学ノート

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小説『美和子』46話(鋏)
小説『美和子』46話(鋏) 


前回はこちら 小説『美和子』 45話(ピアノ)
最初から読む 小説『美和子』 1話(雪の中の小夜子)


田中マネジャーは、転落事故を起こした車を運転していた疑いを掛けられているため
優美に出勤することは難しくなっていた。
本人は無実を主張し出勤したいと言うのだが、大澤さんや蘭が黙ってはいない。
大澤さんが店で暴れでもしたら、営業ができなくなってしまうから
しばらくは休んだ方がいいと言うことになった。

優美には新しい部長とアルバイトが1人、入って来た。
今までと違って、何かとやりづらい気がした。
女の子の移動やオーダーされた物を運ぶ時でも、新しい2人にはとても気を遣う。
田中さんとは息が合っていたんだなと、改めて思い知らされた。

それから1か月近くが経過した。外はハラハラと雪が舞っていた。
その雪を見て、千秋のことを思い出した。
目の前を、他の男の車に乗って通り過ぎた瞬間。
神様は俺の味方をしたのか、それとも嫌がらせだったのか。現実をこの目で確認した。

田中さんから電話がかかってきて、金を貸して欲しいと言われた。
俺は一万円だけ田中さんに貸す事にして、優美の裏口のドアの前に立っていた。
「渡くん。」細くて暗い道を歩いてくる人影。
薄暗い電灯の下だったが、田中さんとは思えない姿だった。
始めは頭に雪が乗ったのかと思ったが、伸びた髪には白髪が混ざり、
髭も数日間は剃っていないようだった。

「悪いね。本当に。実は、千春に家を追い出されてしまってね。」
「えっ。そんな。」俺は言葉に詰まった。
「木更津の実家に帰ろうと思うんだ。お金は必ず返すからね。待っていてよ。」
あんなに仲が良かった2人なのに、千春さんは田中さんの事が信用できなかったのか。
「俺は、疑われて、本当に口惜しいよ。渡くんは信じてくれるかい。」
そう、言われて即答ができなかった。
「マネジャーに限って、嘘はつきませんよね。」そう、言いながらも、
一緒に車に乗っている時に、後輪を溝に落としたあの時のシーンが頭に浮んでしまう。
「わかってくれるか。ありがとう。」マネジャーは両手で俺の手を握った。


あの晩のことを考えてみた。
何故、あの4人は晴海埠頭に行かなければならなかったのか。
部長や則子の家に行くまでの経路上ではあるのだが、埠頭には寄る必要がない。
タイヤ跡などから、ブレーキは一度も踏まれていなかったそうだ。

本当にバンマスが運転していたとして、事故なのか、それとも・・・。
田中さんが運転していたと仮定すると、例えば千春さんが過去に風俗店で働いていた事を、
則子から聞かされてしまい、ショックを受けた田中さんが逆上してアクセルを踏み込んでしまったとか。
それでは過失でもなくなってしまう。何を考えているんだろうか、俺は。


「あの人、精神病院に入院しちゃったのよね。」数週間後に蘭から聞かされた。
「最初は裁判が嫌で、気がおかしくなったふりをしていたみたいなんだけど、
 精神科の先生に言わせると本当に変になっちゃったらしい。」
田中さんが、精神に異常を来たした姿を想像することは、俺の頭では不可能だった。
あらぬ疑いを掛けられて余りに無念だった為か、それとも則子達の亡霊にでも悩まされたか。

俺は数日間仕事を休んだ。何だか、店に出る気力がなくなっていた。
始めは京太郎達もいたし、新宿の街は好きだったから通うこともできたが、如何せ遠い。
余りにもいろいろと、嫌な事ばかりが起こる新宿の街に少し嫌気が差していた。

ベッドに寝転がってテレビを点けてはいたものの、これと言って何も見てはいなかった。
ドラマも何もかもつづきものばかりで、それ以前を知らない俺には話が繋がらない。
午後7時のニュースが始まった。
千葉県木更津市の精神病院で患者同士が喧嘩となり、加害者が鋏で相手を刺し殺した
という内容を聞いて、反射的にベッドから飛び起きた。

加害者は田中さんだった。
争いごとが嫌いでいつも穏やかだった人なのに、何がどう変化してしまったのだろう。
相手のことを鋏で数回刺したという狂気の犯罪者の姿と、
俺が食べ易いようにと、蟹に鋏を入れてくれていた田中マネジャーが同一人物だとは
俄かに信じ難く、俺はまだ人間というものをよく理解できていない鼻垂れ小僧なのだと思い知る。



つづく 小説『美和子』47話 振子時計

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